回転

二枚の花びらが摘まれていた。
誰に摘まれたのかもう分からなくなってしまったが、
次の芽を咲かすために一生懸命大事にしていた最初で最後の二枚だった。本当は綺麗な白だった。しかし途中で真っ赤に染まってしまったものだから、あまりにも可哀想になってコットンをいっぱい買って帰ったのを覚えている。

あんなにも繊細に扱っていたはずなのに摘まれたことに気づかなかった。なぜ気づかなかったのか。いや、本当は気づかない振りをしたのだ。もう大事に出来なくなった。あの二枚が消えても、また新しい花びらを買ってくればよいと思うようになった。

月に三回程度、交換する。すぐ枯れるから回転がとても早い。一時間で新しい二枚を貰い、それらを捨てる。月末にはコットンをたくさん買う。その繰り返しで、最後には花の名前すら分からない二枚に、私は枯らされるのだ。

もう私はあの赤いランドセルを背負えない。
大人になった私はかわいいそれを売ってしまった。
背中がスースーして気持ちいい。
これでやっと、私は私だけのものになれた。
明日も明後日も踊り場で一人の女が回転する。


PS,少しずつ文が書けなくなってる気がする。