黒い高揚

高揚した男の股座で女がうずくまっている。女の表情は隠れて見えないが、泣いているのが私には分かった。涙は流れていないものの、紅潮した女の頬が、強い怒りと悲しみを帯びて静かに血を充満させている。女の上で動くリズムが早くなると、互いの表情が苦しくなってゆく。同じ気持ちでいるはずなのに、女の脳裏に別の黒い男が何度も現れて快楽の邪魔をしてくる。
本当に誰も悪くないのか。
黒い男が、「悪いのはお前だ。」と女に囁く。何度も私は、彼女に大丈夫だよと声をかけてあげるが全く届かない。女を救ってやれなかった憎しみを、私は目の前の男で体現する。身体の底から快楽を締め上げるように女が天井を睨み、静かに怒鳴る。

悪いのは私だ。
助けてあげられなくて本当にごめんなさい。