復讐

拙くなってゆく言葉を一生懸命絞り出しても、もう出てこない。出てこないことすらどうでも良くなった。一般社会にのまれてゆく感覚に慣れてしまった。
私は「二十歳の原点」を読まずに21歳になった。就活のことで頭がいっぱい。恋人のことで心がいっぱい。他人の悲しみを考えたくもないし、自分の悲しみと向き合いたくない。思い出したくもない。いまの自分の生活だけで精一杯だ。私の事を傷つけてきた動物はみな死んでしまえばいい。私の事を大切に思ってくれない人間は絶滅しまえばいい。私がいるのに、そこにいたのに、目の前で自分を傷つけたあの時の母親も嫌い。お母さんを殴っていたあの時の父親も嫌い。もっと勉強して知恵をつけていれば良かった。幼くて知識がなかったあの時の私も嫌い。何も出来なかった自分が憎い。蚊を殺せば生態系が崩れるように、私の心を殺してきた者の世界が壊れれば良い。お前にとって私が、血に寄ってくる気持ちの悪いメスの蚊だったとしても、それでも自分を守りたかった。嫌だと言えなかった、自分が逃げれなかった私が悪い。振り切った先には現実社会が私を試してきた。飲まれた途端に言葉が消えた。今を生きるしかない。強くなるしかなかっただけで、本当は優しい人間になりたかった。