私は赤いランドセル

大切にしていた日記を捨てた。ポチャンと音を立て真っ黒い底へ呆気なく沈んでいった。これでいい。もう大丈夫。安心だ。これで私の心は守られる。誰にも知られたくないしもう誰にも脅かされたくない。一生懸命息をして存在していたのにこんなにも簡単に壊れるなんて、本当に無様で馬鹿馬鹿しかった。愛してほしいなんてそんな強欲さは必要ない。ただわたしが今ここに存在して必死に生きていることを認めてさえくれたらそれだけで幸せだ。愛してるなんて言葉は私の次に醜い存在である。

わたしは赤いランドセル。
いつの日か私は彼女とお揃いになっていつの日か私は彼女と共に息をしていた。あの日私は真っ赤に染まった。女の子の日だった。私のランドセルはお気に入りの赤色だった。他のどの色よりも濃くてお上品な赤色であった。私と彼女は弱くて脆い小さな背中をお互いに守っている。赤いランドセルを背負ってもう誰にも買われないように必死で守っているのだ。だからあの二枚は少しでも早く私の将来の希望に役立てるのだ。そして私達は絶対幸せになるのだ。


何事に於いても人生に期待してはいけない。