2021-01-01から1年間の記事一覧

せかい

昨日、空に星が輝いていた。今日の朝、空に月が浮かんでいた。お昼時、久しぶりに万物流転を見た。コインランドリーには光が差していて、年季の入った木目を、ローファーでなぞりながら歩くと、コツコツと音がした。その音には楽しい匂いがした。ごみ箱には…

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私がこの世界に居ても良いという理由がほしい。魂と肉が存在する「ここ」は子宮のように心地よく、温度が一度たりとも変わることのない温もりを感じていたい。私が求めるのは、ただそれだけなのだ。私の性欲というものは、常に混沌としている。これはおかし…

ピンク色の風船

緊急事態宣言が解除されたのと同時に、この街も少しずつ色を放つ匂いがしてきた。その時、これからの時代を突き進むであろう愛を知らない若者たちの手から、ピンク色の風船が飛んでいった。それは今にも破れてしまいそうな皮膚を帯びながらゆっくりと、寒い…

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昨日夢を見た。彼女がそこにいた。目が覚めた。そこには白い天井があった。それだけだった。 考えにふける夜はいつにも増して星たちが眩しくなる。愛。それは私にとってどのような存在なのか分からなくなった。紛れもなく美しく温かいものであるのは知ってい…

踊り場

最後は子宮だった。悲しくて涙が出た。こんなに悲しいのに私は踊っていた。こんなに胸が張り裂けそうなほど苦しいのに、ゆっくりと本能が私を刺し殺していった。最後まで踊り場から逃れることは出来なかった。残酷な瞬間はとても美しいことを私だけが知って…

即席の愛

醜さを美しいと思える瞬間を優しく包み込むことができたら、ひとは一生永遠になれるのに。美しい瞬間だけで形成される子宮に還ると、永遠がひとを鮮やかに殺してくれる。永遠の愛は、間断なく臍の緒を伝って宇宙から降り注がれた後、やがて灰になる。その灰…

時代と私

時代はうつり変わってゆく。 2021年3月11日。震災から11年経った。少しずつ街が変化して、今まで生活していた場所から人々が離れていく。私もこの11年で更に多くの経験をした。時代と共に変化していった。心と体が成長したのを実感する。しかし自分という存…

告白

性欲というものは穢らわしい。しかし私にもその穢いものを持っていたのだ。認めたくなかった。おじさんと同じ欲があるなんて許せない。ましてや少女だった私に突きつけられたむき出しの欲はずっと脳裏にこびりついて一生あの忌まわしい記憶が離れない。たま…

新しい街

幸せは残酷だ。 過去の悲しみも喜びも忘れてしまう。新しいは残酷だ。 過去の古いものが捨てられてゆく。 私の新しい街は誰かの古い街。どんどん移り変わって残酷が増えていく。だけどその分新しい幸せも増えていく。そうやって私たちは生きていく。わたしは…