渦中

2022年7月8日。現代の若者の指が盛んに動きだす。
SNSや新聞、テレビなどの多くの媒体が情報を更新する。かっこいいお洋服や可愛いアクセサリーをアップする。自分の気持ちを綴った文章をアップする。
人間は誰も救うことができない。
あなたも私を救えなかった。私もあなたを救えなかった。あなたというのはあなたである。それは特定的な人物でもあり私の知らない人物でもある。
増税少子化憲法改正。無駄な情報が錯綜する。
明日の天気は晴れのち雨。病院に響く真新しい産声。イヤホンから漏れるしゃがれたギターの音。快速電車の警笛。雑踏の中で命が一つずつ生まれ消えてゆく。
人間は誰も救うことができない。
通りゆく人々の鼻が伸びていくのを感じた。
私の鼻もいずれそうなる。それがとてつもなく怖い。
若者たちが恋をする。需要と供給で食い繋ぐ社会。
彼らの身体はみんな違うと思った。しかしどれも同じだった。変わらなかった。
人間は誰も救うことができない。
気持ちを吐き出す。心を吐き出す。そうやって生きていても何も出なかった。
水分を出す。体液を出す。そうやって生きていても
何も変わらなかった。
人間は誰も救うことができない。
少しでもいいから助けてほしかった。
空は多分、明日も綺麗だと思う。