warmth

一枚のキャンパスに「私」がいた。彼女は、微かに微笑んで僕を数分間見つめた。彼女の瞳は茶色で、その小さな玉は 光の反射で魂が宿っているのが分かった。僕は左手で、髪の毛、鼻、唇と彼女の身体を辿った。そして彼女の乳房に触れてみた。しかし、鱗粉のような膜に覆われ、核心に迫ることは出来なかった。今度は彼女の唇にキスをしてみた。しかし、自分の唇の柔らかさしか感じることが出来ず、固まった油ですら、僕と絡むことを拒んだ。なにをすれば、彼女の温もりに触れることが出来るのだろう。僕はその術を失い、彼女に抱きついた。すると、僕の頬に重なった彼女の頬から、体温を感じた。やっと僕は彼女に気づいて悲しくなった。しかし同時に嬉しくなった。彼女が求めているのは「それ」ではなく、「こうする」ことだったのだ。
僕はもう一度彼女を見つめた。
彼女はやはり微笑んでいた。