最終日に描く輪郭線

車窓から海が見える。
青色の表面が太陽に反射し、キラキラと光っていている。
ずっと海の波打つ様子を見ていると、まだ少しだけ温もりのある、乱れたお布団に見えて飛び込んでしまいたくなった。


人生の始まりは、夏休みの最終日に溜まった課題のように真っ白だ。少しずつ解き進めて、国語の大問2がやってくると、他人の人生に関わりを持たなければいけない瞬間に、私たちは直面する。自分の人生ではないからすごく面倒だし、同情なんてすれば自分が傷つくだけだ。しかし、それはとても素敵なことである。他人の輪郭を観察していると、孤独から数秒逃れることが出来る。さらに、お気に入りの輪郭線に出会うともっと細かく触れてみたくなる。指でなぞってみて、どんな曲線なのかとか、どのくらいの太さをしているのかとか、自分の中に取り込みたくなる。そうやって相手の心も身体の中身も知りたくなる。


私たちはいずれ、課題の最終ページに到達する。
最後の問題はどんな内容なのかは誰にも分からない。
振り返ると真っ黒に染まっている。

ふと、自分の骨をなぞってみた。
しかし触れることすら出来なかった。